隣のオアシス


 正確な日にちなど覚えていない。

 そもそも、現在において、日にちというものが存在するのかも疑わしい。日が昇れば朝が来て、日が沈めば夜が来る。その繰り返しの日々。今日が何日で、何曜日かなんて意味がないのだ。

 何が起こって今の状況になってしまったのだと、正確に伝えられる者などきっといないだろう。俺の周りではいない。地震があったと言う者がいたと思えば、窓の外が光ったと顔を青白くして言う者もいる。一方で、隕石が衝突したのだと、家が激しい衝撃に襲われ炎に包まれたことを細かく説明した後、そっと息を吐く者だっている。俺に関して言えば、まったく覚えていない。目を覚ましたら、辺りは草ひとつ生えていない荒野になっていたとしか言いようがないのだ。もともと地震の揺れや、人の声で眠りから目覚めたことはない。一度眠りに落ちてしまえばなかなか目覚めないことがよかったのが悪かったのか、起きて一番に見た景色に俺は言葉を失った。

 生き延びた俺らは、あの日のことを『災厄』と呼んでいる。

 あの日以降、俺らの中に国内だとか、外国だとかいう概念も消えた。なんせ海が消えたのだ。踏めば墨のような臭いが立ちのぼる土も、もうない。乾ききって、ひび割れた黄土色の大地が目の前に広がるばかり。左右どこを見渡しても、延々と続く荒地を想像できるだろうか。実際目にしたときでさえ、俺は自分の目と頭を疑った。眠っている間にどこかに頭を強くぶつけ、錯覚でも見ているのかと思ったが、現実なのだ。病んで幻を見ているだけなら、どれほどよかったか。