「悪い。……でもなんで来てくれたんだ?」
俺の言葉に、一瞬ガイの足が止まる。そして再び歩き出す。
「馬鹿じゃねえの。みんなお前のこと心配してるってのに」
「みんな? は? なんのことだ――」
「気づいてなかっただろ。夜中にこそこそ抜け出すもんだから、みんな悪いことしてるんじゃないかって、お前が戻ってくるまで起きてたんだよ」
言葉を失った俺に、ガイは続ける。
「今日はやたら帰りが遅いってみんな散々心配してたのにこれだしよ……。俺が探しにこなかったらお前あのまま死んでたかもしれないんだぜ?」
ガイは一瞥をくれると、あからさまなため息をついて、また何事もなかったかのように歩き出した。それからはしばらくお互い無言だった。
「……あの女の子、アキラの知り合いか?」
少し躊躇いの含んだ声に、俺は頷く。
「あそこで知り合ったんだ」
「そうか……。埋める場所をなんとか探してやろうぜ。あのままじゃあ、可愛そうだろう」
「ああ」
明日になれば、彼女の目を正面から見られるだろうか。そして謝ることができるだろうか。まだ胸の奥に落ちた黒い塊は消えていない。ユリの笑った姿が瞼のすぐ裏にうつっているような気がする。目を閉じて、息を吐く。ユリがあそこで歌を歌っていた理由もしらないまま、もう二度と会えないのだ。そう思ったら、いまさらのように涙が滲んだ。



