「馬鹿か! 水場の近くで殺るな! 飲めなくなるだろう!」
男の声が、遠くで聞こえるように感じた。
俺は茫然と、ユリを見つめている。目は開いたまま、空を見つめている。彼女の指が何かを掴もうと伸びたまま、静止していた。きっと、男らに掴みかかろうとしたのかもしれない。どこか男勝りな彼女がいかにも考えそうなことだ。
今、自分がすることは何か。
全然わからなかった。ただ膝が震える。唇が震える。声が出なかった。逃げ出したい気持ちが強く、今にも疾走したがっている。けれど、逃げ出した瞬間、奴らの攻撃の的が俺に変わったら?
情けないことにも、ユリを撃たれた怒りよりも、自分の命の心配しかしていない自分に泣きたくなった。あれほど死にたいと望んでいたのに、いざ恐怖を目の前にすれば、やはり命が惜しくなる。恐ろしかった。許しを請いたかった。
けれど、そのどれも奴らは許してくれなかった。
続けて銃声が聞こえたときには、俺の視界は反転した。
倒れたのだ。どこを撃たれたのかわからないほど、全身に電流が走ったかのような痛みが貫いた。思わず呼吸を止める。息を吐くと、あちこちが悲鳴を上げるのだ。だが、自分の身体が地面に到着した瞬間、骨がばらばらになるかと思うほどの痛みを覚えた。
喉から呻きともつかぬ声が漏れる。意識がぼやける。
周りで何か話し声が聞こえたが、何を話しているのか全く聞き取れなかった。瞼がゆっくりと落ちていく。やがて足音が遠くなり、ぼんやりとした意識の中で、ほっと息を吐いた。



