みな防塵マスクをつけていない。おそらく三番地の者らだろう。彼らは自分が何ものにも恐れないとでも言うように、防塵マスクをつけ全身を隠すような出で立ちの者を見ると嘲るのだ。いつも数人固まって行動し、ゲラゲラと大口を開けて他人を指差す。そんな彼らが、俺やユリの姿を見てさらに眉間に皺を寄せた。
「なんでマスクしてねえんだ?」
「いきがってんじゃねえよ」
「そんなに死にたいのか」
口々に、自分のことを棚に上げて好き勝手言う。
彼らの手にナイフが握られていることを見つけると、俺はそっとユリの傍まで移動し、視線は男らからそらさず、小声で「逃げろ」と囁いた。しかし、ユリは動く気配すら示さず、それどころか、つかつかと男らに向かって歩き出した。
「おい!」
歩き出したユリの折れそうな腕を掴んだが、それよりも早く男らが動いた。
空気を震わせる、銃声が辺りに響いた。
思わず手を離し、両手で耳を塞ぐ。いっきに静寂が辺りをつつみ、静かに何かが倒れる音が聞こえ、そこで俺は慌てて目を開けた。少し前を行くユリが、地面に這うようにして倒れている。池のすぐ隣だった。白いワンピースが暗がりでもよく見えた。赤い染みがゆっくりと染める範囲を広げていく――。
流れ出たユリの血が、地面を伝い池の中に流れ出る。まだら模様を描きながら、水面を揺らしていた。



