隣のオアシス


 自分もそうではないのか。むしろ早く死にたいと思ってはいなかったか。それだというのに、肌の露出を抑え、律儀に防塵マスクを手放さないあたりを見れば、自分がどれほど怖がりかわかる。

 自嘲的な笑みが唇に浮かぶ。そして、マスクに手を伸ばす。最初何をしているのかわからなかったのだろう。俺の動作を不思議そうに見守っていたユリが、急に慌ただしく立ち上がり手を伸ばして阻止しようとしてきた。目に困惑の色が濃く塗られている。

 防塵マスクを脱いだ俺は大きく息を吸い、そして吐いた。

 思っていたよりも、なんてことはない。汗を吸い込み、重みに耐えていた俺の髪はぺったりと額や頬に貼りつく。ぐしゃぐしゃと髪をかき乱し、冷たい空気をいっぱいに取り込むと、妙に頭がすっきりした。しかし、そんな俺の様子に、ユリは困ったように固まっている。

 大丈夫。そう呟き、俺は夜空を仰いで、しばらく動かなかった。