広斗side


「今日からまた学校かよ。
つか、お前よく起きれたな。」

「あぁ…。目が覚めた。」

「ふーん、珍しい事もあるんだな。」


俺の隣を歩くコイツ。低血圧で朝が弱いらしい。

学校のある日はいつも俺が迎えに行く。

じゃなきゃ、コイツは来ないから。


俺とコイツ、吉田ハルは小学校からの仲だ。

いわば幼なじみってやつ。

家も隣同士で、親同士も仲がいい。

兄弟みたいに育った俺等だからお互いの事は大抵分かる。

例えば、女関係、とかさ。


コイツは男の俺から見ても格好いいと思う。

長身で目は二重、鼻が高く日本人離れした整った顔をしている。

加えて女には優しいし、勉強もできる。

午前の授業なんか大抵寝てるくせに、学年でかならず5位にははいってる。

テスト勉強だって、俺がみてる限りではしていない。

なのになぜだ?って、いつも不思議に思う。


俺は?って?

俺は授業にも真面目に取り組んでるのに
なぜか全体の真ん中くらいなんだよね。

まっ、平均はとれてるからいいんだけどさ。


そんなハルだからコイツに惚れる子もいてさ、
告白もけっこうあるわけよ。

ハルは優しいからさ、好きじゃなくても付き合っちゃうわけ。

そんなの女の子が可哀相だろ?

でもハルはふる方が可哀相だって、もしかしたら好きになるかもしれないじゃんって言うんだよ。

まぁ、結局ハルが本気で好きになったことはなくて、女の子の方から離れて行っちゃうんだけどね。




「ん?どした?」

急にハルは立ち止まった。そして遠くをみている。

俺もハルの見ている方に目をやると、




「…女の子?」

桜の木の下に女の子がいた。

遠目から見ても、可愛い女の子だと思った。

「あいつ、知ってるか?」

「杏里ちゃん。」


俺は杏里ちゃんを知っている。名前は瀬戸杏里。入学式の時から彼女は有名だ。

ストレートな黒髪に、目はパッチリ二重。ピンク色のぷっくりした唇。

身長は小さめで雰囲気はほんわかってとこか?

いつも笑顔で人懐こいらしく男子には特に、女子にも人気がある。

俺は喋った事ないけどな。

ダチが杏里ちゃんに一目惚れしてさ、一年の時はクラスがちがったから、杏里ちゃんのいるクラスまで見に行ったんだよ。

結局ソイツは好きな人がいるとかで振られたんだけど…。 





ハルは無言のまま、ずっと彼女を見ていた。

こんなにハルが女に興味をもつのは“あの人”以来だな。