パンパン
「おーい、座れー、ホームルーム始めるぞ。」

先生が手を叩きながら入ってきた。

その後ろから背の高い男の子も一緒に教室に来た。


「その前に、転校生を紹介する。丸山洋介君だ。丸山君、あいさつして。」

「丸山です。よろしくお願いします。」





ヨウちゃんだ。本当にヨウちゃんが帰ってきたんだ。

私と同じくらいだった背も伸びて、大人っぽくなったけど、小さい時の面影が残ってる。



「ヨウちゃん…。」

思わず呼んでしまった。

呟きくらいの小さい声だったけど、ヨウちゃんには聞こえたのかな。

ヨウちゃんと目が合いニコッと笑ってくれた。



笑った時にできるえくぼ、昔と変わらない。

私が大好きだったヨウちゃんなんだって思えた。




「じゃあ、丸山の席は…、取り合えず吉田の後ろな。吉田、手上げろ。」

吉田君はゆっくり手を上げた。

「あそこな。」

「はい。」

ヨウちゃんは先生に頭を下げ、自分の席に歩いて行った。

その合間に、チラっとまた目が合い微笑まれた。



ドキドキ



やばい。顔が…。



「あんた顔にやけすぎ。」

「裕子ー、やばいよ嬉しすぎるよぅ。」

「はいはい。よかったわね。」

っと、裕子にかるくあしらわれちゃった。こんな時だといつもは拗ねるとこだけど…

今は何言われてもいいもんねー。

私の心はルンルンだよ。




「今日のホームルームだが、1限目もつかって、席替えをする。」

そんな先生の声に、みんなは大盛り上がり。

私は幸せな気分から一転、




「…最悪。裕子ー、別れるなんてヤダよぉ。」

「ちょっと、誤解を招く言い方やめなさいよ。ただの席替えでしょ。」

クスン。裕子は私と別れても寂しくないんだ。クスン。








この席替えでミラクルが起こる事を、この時は知らなかった。