「ほな、行きますか?」
礼音君が棗ちゃんの頭を小突いて
「駆一郎さんと薫子さんはヒロさんの車に乗って下さい」
「私もヒロの車に」
「お前はこっち」
「だってヒロの車の方が礼音の車より」
「悪かったな」
また言い合いが始まった。
「はい、ストップ!棗ちゃんは礼音君の車ね」
「…はい」
笑顔で言う乃亜ちゃんの瞳に…棗ちゃんも逆らえない。
さすが乃亜ちゃんだわ。
車に乗って
――
―
あ、あれ?
レストランと反対方向だよ。
此方に行ったら…
駆一郎と顔を見合わせてると
キィーッ!
車が止まった。
乃亜ちゃんがドアを開けて
「さっ、降りて」
「乃亜ちゃん」
「いいから。ねっ!」



