「お待たせしました」


テーブルの上にカフェオレの入ったカップを置くと、おじいさんは何も言わずにそれを口元に運んだ。


「ごゆっくりどうぞ」


あたしが笑って言うと、おじいさんはいつものように左手を上げて“どうも”のサイン。



ここで働き始めて、あたしは以前より人を好きになった。


お客様ひとりひとりの特徴や癖を見つけたりして、例え見た目が怖かったりしても興味が持てて、それが“好き”に繋がっていく。


接客を通して一番学んだことかもしれないな。



あたしはルンルン気分で厨房に戻っていった。