無邪気にカウンターへ走り、『ここに来て』と言うように机をポンポン叩く。
「この店のオススメひとつ!」
テキトーな注文だな。
「雪乃ちゃん特製のカフェオレ作れば?」
「えっ、そんなのあるの?ならそれで」
「えっ、か、かしこまりました」
あたしは厨房に戻り、いつものカフェオレを作った。
それを店長オススメのケーキに添えて、彼のもとへ運んだ。
「こちら、カボチャのタルトとカフェオレになります」
「やばっ。俺カボチャ大好きなんだよな♪」
出会った時よりも、子どもっぽく感じる。
きっとあの時は、頭をポンってされたから彼が大人っぽく思ったのかな?
「ねぇ、あんた彼氏いんの?」
「え?」
気がつけば彼は、あたしの左手の薬指に目を落としていた。

