病室のベッドの上で、あたしは上半身を起こしたままお腹をさすっていた。
でもさっきから、お母さんの元気がない気がする。
「ねぇ、お母さん」
あたしが呼ぶと、お母さんは顔を上げてこちらを見た。
「もしかして、産むの反対?」
賛成なら喜んでくれるはず。
なのにお母さんは話しかけることすらしてくれない。
「雪乃、亮也くんはもういないのよ。その子を産んでも、あんたひとりで育てなきゃいけないの。生まれてくる子がかわいそうじゃない」
「あたしは絶対にこの子を産む。亮也が残してくれた命なんだもん――」
「雪乃!それがどれだけ大変か分かってないでしょ!」
「分かってるわよ!でもおろすなんて残酷なことできないじゃない!」

