「雪乃!」
名前を呼ばれ、あたしは目を開いた。
そこはいつもと変わらないあたしの部屋のベッドの上。
隣にはお母さんがいて、しっかりとあたしの手を握りしめていた。
「雪乃……やっと起きたのね」
目に涙を溜めたお母さんがあたしを抱きしめる。
「あんた、丸1日気を失っていたのよ」
「えっ、どうして……」
「亮也くんが亡くなったって聞いて倒れたのよ。覚えてない?」
記憶をかき集めても、何も思い出せない。
「これからお葬式だから、早く準備しなさい。
亮也くんに会う最後なんだから、綺麗にして行かなくちゃ」
「……うん」
それだけ言うと、お母さんは部屋を出て行った。
でもすぐに鼻をすする音が聞こえた。
お母さんは、あたしの前では悲しみを見せないようにしてくれたんだ。

