「あいつに言われたんだ。救急車で運ばれてる途中に、“雪乃をよろしく”って」
顔を上げたマサキは、苦笑いを浮かべてそう言った。
「でも亮也の友達とは言わない方がいいって思った。だからあんな出会いの形だったんだよ。雪乃がキーホルダーを落としたのを利用したんだ」
あたしたちの出会いは、彼があたしの大事なものを拾ってくれたのがきっかけだと、あたしは信じてた。
でも、マサキと出会ったのは亮也が亡くなってからだいぶ経っていた。
「きっかけを探してたから、時間がかかったの?」
「それだけじゃないよ。俺には時間が必要だったから。俺自身が変わらなくちゃいけなかったから」
マサキは姿勢を正し、あたしと向き合った。
「まず、見た目を変えること。似てたら思い出しちゃうでしょ?だから全く別のタイプにね。髪色変えて、服も亮也が着ないようなちょっとチャラチャラしたやつ」
確かに、しっかり者の亮也はマサキのように女々しい格好はしないかも。
「あと、妊婦の雪乃のためにタバコを止めること。俺、これでもヘビースモーカーだったんだよ」
可笑しそうに笑うマサキ。
あたしのためにそんなことまでしてたんだ……

