ホームレスな御曹司…!?

「オレさ、お飾りだったんだ」


「…え?」


「親父の会社継ぐただのお坊ちゃん社長。何も見えてなくてさ、毎日年上の部下に頭下げられて、なんとなく社長って肩書きふりかざしてた」


「………」


「仕事はこなせてた。だけど、背負ってる物なんて何も見えてなかった。グループで働く社員、その家族、その生活。オレには重かった」


「近文…さん…?」


「しまいには親が勝手に決めた縁談。こんなオレじゃ、家族を作るなんて無理だし。とうとうオレは逃げたんだ。ホームレスやってさ、寒さと空腹、蔑むような世間の目を見てさ、オレなんて、オレの人生なんてこんなモンでいいって、諦めてた」


「ハイ…」


「でも、拾っちまってさ。心ってヤツ、拾っちまってさ。その心が疼いてたまんなくてさ。欲しくてたまんなくなった」


「ココロ…?」


「うん。心を持った女を拾っちまったんだ。その女がどうしても欲しかった。自分から欲しいと願ったモノは初めてだった。オレは産まれた時から何でも与えられたし、何不自由なかった。手を伸ばしてまで手に入れたいモノに、初めて出逢ったんだ」


女の子…。


ヤスさんが言ってた近文さん欲しい物って、その子の事だったんだ…。