「なにが?」 彼はこちらを見ない。 私の指をつかみ、鍋にいれたまま、 放さなかった。 「熱いです。ごめんなさい。 放してください!」 「今自分で入れようとしてたじゃん。」 「違います…味見をしようと思って…。」 「それで汚い指なんて入れようとしたの? 結果同じじゃね?」 鍋のなかのシチューはグツグツと煮立っている。 沸騰しているから、とても熱い。半端ない。 「ごめんなさい。 指を入れようとしてごめんなさい。 放してください。」 そう懇願すると、彼は指を離してくれた。