遠い距離



『沙羅さんは今日どちらにお出かけに?』




俺は残った弁当を食べながら聞いた。




『少し遠くの料理教室に行ってました。その途中にさっきの男性と出会ってあれこれ付き合ってたんです。……断ってもしつこくて。』




『それは災難でしたね。……羨ましいな、あなたの料理が食べられる人はさぞ幸せでしょうね。』




『……そんなに褒めても何も出ませんよ?』




『あなたが好きな人にその料理振る舞ったことは?』




『立派に振る舞える様に修行中なのでまだです。』




トクン…




――…やっぱり俺はこの彼女の笑顔が好きだ。