――…あんな奴、沙羅さんには勿体なさすぎる。 トントンと肩を叩かれた。 振り向くと彼女は俺にお辞儀をしていた。 彼女の頭が漸く上がると俺は手話で会話をした。 口をゆっくりと大きく開きながら。 『感謝してもらって嬉しいです。』 彼女は一瞬固まってすぐさま俺に手話で返してきた。 『どこかでお会いしましたか?』 きっと彼女は、何故俺が彼女の耳が聞こえないことを知っているのか不思議なんだろう。