風邪で声が出ないと言われても、離れていても、その人を感じることができるのは声だけなんだ。


だから…聞こえるうちに大切な人の声を聞いておきたいという想いを我慢できずにはいられないんだ。


きっと川星さんなら、喉が張り裂けようが道のど真ん中であろうが力限りの声を沙羅さんに届けるだろう。




だけど、




「      」




彼女が同じ言葉を何度も俺に言う。




「      」




だけど俺は川星さんじゃない。


俺は何も言わないままでいると、やがて通話は切れてしまった。