材料を買ってから、家の近くにいると、いつもは無いはずの車が家の前にあった。

お母さんが帰ってきたんだ…。

そう思うと、自然と体が震えて、あたしは家とは逆方向に走った。


「おい、柚子!どないしてん!」


あたしは、近くにある公園に入って足を止めると、湊が心配そうに見てきた。


「今は、帰りたくない…」

「え…」


あたしが、いきなりそんなコトを言ったから、湊はビックリしてマヌケ面をしている。


「いきなり、どないしたん?」

「いや、なんでもないよ。今日は、ありがとう。先に帰ってて。あたしは、もうちょっとここにいるから」


あたしが、そういうと湊は笑って
「一人は、ヒマやろ?柚子が帰るまで一緒に居るよ」


あたしは、そんなコト言われたのは初めてで、湊を見ると優しく微笑んでいた。


もしかすると、あたしはこの時から湊に恋していたのかもしれない。