「唯也。」
不意に呼びかけられてはっとすれば、オフクロが立っていた。
「ああ。今注ぐからこの皿運んで―――」
「唯也。ごめんね。」
突然の謝罪に動きを止めて、怪訝にオフクロを見る。
「お父さんが亡くなって、働く私の代わりに家事や弟の世話全部任せちゃって。」
「無理してやってるつもりはないケド?」
家のコトは誰の為にしてるわけでもない。
家のコトなんだから家族の誰かがするのが当たり前で。
俺の生活を犠牲にしてやってるつもりなんてない。
お袋が分かってると言うように頷く。
「アナタが家のコトを優先させてくれるのはスゴク助かってるし感謝してる。でもその所為でアナタに切り捨てさせちゃったのよね・・・
トモダチとか、部活とか、趣味とか、恋愛とか・・・」
とっさに言葉が出なかった。