暫く歩いて、マンションに辿り着いた。
「空良の相手してろ。」
家に着くなり、ちゃっちゃかベランダの洗濯物を取り寄せながら、唯也が軽快に命令してきた。
「ひょっとしてご飯アンタがつくんの?」
「そーだ。」
「お母さんは?」
「お袋は働いてる。親父がいねーから。」
「・・・離婚?」
「いや、病死。もともと体弱いヒトだったから。」
そんな会話の間にも唯也はブレザーを脱いでエプロンを着けて、冷蔵庫から食材を取り出していた。
その手際の良さに、ほんのちょっと唯也のコトが分かった気がした。
特に部活に入っているワケでもなく、
だからと言って遊び歩いているワケでもなく―――
それなのに学校が終わるとさっさと帰っていく意味が分かった。
働いてるお母さんの代わりに、唯也がいつも弟の世話とか家事をしてんだね。