高校二年の蒸し暑い季節。
それは突然だった。
ミーンミーンミーン...
「ん…るさいな、ほんと」
ここ最近、鳴きやまない蝉が私の目覚まし時計の代わりとなっている。
まだ重たい目蓋を擦りながら階段を下りると、朝食を並べているパパが見えた。
「…おはよパパ」
「お、土曜日なのに早起きだな杏(あんず)」
「うん…蝉がうるさいの」
「蝉か、夏だけじゃなくずっと杏を起こしてくれたら俺は楽だな」
チンッとパンが焼きあがると、パパは慣れた手つきで目玉焼きをパンの上にのっけた。
「それは絶対やだ」
「はっはっは、冗談だ…ほら、出来たぞ」
愉快に笑うパパに、ムスッとしながら目の前に置かれた朝食を口に運ぶ。
