「俺も、そうだった」



蒼意は続ける。



「初めて、空を見たとき。初めて、空に向き合おうとしたとき」



蒼意は深く、息を吸った。



「空が綺麗だって、思ったことはある?」



歩美は、蒼意の横顔を覗いた。



「言われたんだ。あの人に。…で、俺も、そう応えた」



歩美には、蒼意の瞳は『空』の先を見つめている様に思えた。



「綺麗だとしか思えないって。そしたら、あの人は笑って、言ったんだ」



蒼意は小さく、息を吸った。



「それは、見てるからでしょって。見つめていないからよって」



蒼意は空を見つめていた。