愛歌はちゃぶ台に食器を広げてゆく。



「彼は女性…。どういう意味かしら?」

「…性同一性障害。彼の自意識と身体の性は、一致していないんです」



愛歌は手を止めた。



「周りの皆は、どうしてるの?」

「皆は、彼を男性として接しています。彼の自意識に沿って」

「皆、優しいのね」



愛歌はまた、手を動かし始めた。



「講習会が有ったんです。空知くんについて」

「そう。症状でなく、本人について…。そうね。明凪学園は、そういうところだわ」



愛歌は優しく微笑んだ。



「さ、ご飯にしましょう」