文学性という言葉を見て、歩美は画面を動かす指を止めた。



「文学性…」



呟き、足を止める。



この情報によれば、日常にも、文学性というヤツは有るらしい。





歩美は周りを見回した。





車、光沢のあるコンクリートの車道、煉瓦の歩道、街路樹、様々な高さの建物、通行人、雲、空、月。





歩美には、それは、そうとしか見えなかった。

なんの神秘性も感じない。

空想的だなんて思えない。

含意も、メッセージも伝わらない。

なにものも、なにごとをも、語りかけてなどこない。





歩美は唇を噛み、アテも無く走り出した。