『美夜……』
美夜をそっと抱き締め、初めて名前で呼んだ。
美夜がずっと望んでいた事だ。
頬に触れ、キスをしようとした時、大きな瞳から涙が零れた。
『美夜が泣くのを見るのは二度目だな。
辛いか?』
美夜は首を振る。
『違う……アタシ、仁が好き。愛してるの』
胸が熱くて言葉にならない。
オレは返事の代わりに微笑んだ。
そして美夜を抱いた。
狂おしい程に愛しい美夜。
やっとオレのものになった。
このまま続くと思われた幸せな日々は、ボスが殺されたことにより終焉を迎えた。
なぜか美夜がボスを殺したことになっていた。
『美夜は殺していない!』
そう言っても誰も聞き入れない。
証拠が残っていたらしいが、美夜ならばそんなヘマはしない。
きっと嵌められたのだ。
オレは独自に調査するため美夜の元を一時離れた。
待っていて欲しいと伝えて。
しかし調査をしている間に、美夜は命を狙われ1人逃亡してしまった。
逃げるなら、連れて行って欲しかった。
喪失感に耐えながらも、オレは調査を続けた。
結果、美夜を嵌めた犯人は現在のNo.1である龍二だと判明した。
『なぜ美夜を嵌めた?』
問いただすと龍二は笑いながら言う。
『俺を振った。そしてNo.1の座を奪ったからだよ』
オレは龍二の頭を銃でふっ飛ばし、組織から逃げ出した。
美夜同様、組織に追われる身になった。
ボスがいなくなってからの組織は別の暗殺組織に吸収され、かなり規模が大きくなっている。
どこへ逃げても追っ手が来なくなることはなかった。
『生きててくれ……』
美夜に会いたい。
また再びこの腕の中に美夜を抱きたい。
その一心で美夜を探し続けた。
やっとの思いで見つけたのは半年後、イタリアの片田舎だった。
驚いた事に美夜はオレとの子供を妊娠していて、もうすぐ産まれるのだと言う。
久しぶりに美夜を抱き締める。
『美夜、愛してる。オレだけのものだ』
声を押し殺して泣く美夜を見て、オレは決意を固めた。
美夜と子供と幸せになる。
『オレ達のために組織を潰す。
必ず帰ってくるから、待っていて欲しい』
そしてオレは子供に付ける名前を決め、日本へ舞い戻った。

