仁が初めてアタシを名前で呼んだ夜。
『美夜……』
声が全身に染み渡るようだ。
仁が触れた場所が熱い。
気付いたら涙が溢れていた。
『美夜が泣くのを見るのは二度目だな。
辛いか?』
仁が困った顔で見てくる。
『違う……アタシ、仁が好き。
愛してるの』
やっと伝えたアタシの言葉に仁は微笑むだけだった。
アタシは仁に抱かれ、本当の意味で女になった。
大事にされて、とても幸せだった。
でも幸せな生活は長く続かなかった。
ボスが暗殺された。
真犯人はわからないが、アタシが殺ったと皆が言う。
アタシは嵌められたのだ。
仲間に殺されそうになり、組織を逃げ出してしまった。
仁を置いて。
偽造のパスポートを手に入れ、国外へ逃れた。
自慢の長い髪も栗色から黒に変えて、肩の辺りまでバッサリ切った。
服もカジュアルなものしか着ないようになった。
それでも刺客はやってくる。
すべて返り討ちにしてやった。
いろんな国を転々とする逃亡生活。
ある日、自分の身体の異変に気付いた。
もう何ヶ月も生理がきていない。
病院で調べてもらうと妊娠5ヶ月目だった。
仁とアタシの子供。
“産みたい。
仁に会いたい”
それだけを望み、生き続ける。
妊娠8ヶ月目に入った頃、アタシはイタリアに落ち着くことに決めた。
刺客が来なくなったのと、出産準備の為だ。
アタシの大事な大事な赤ちゃん。
仁との愛の結晶。
赤ちゃんは男の子らしい。
産まれてくるのが楽しみだ。
そして、出産予定日直前。
一つ、願いが叶った。
アタシを探し続けた仁が目の前に現れた。

