片付けは後から来る処理班がしてくれる。
依頼された分の仕事は済ませた。
帰るために部屋を出ると、子供はついて来た。
所どころにある死体に取り乱すこともなく。
『行く所なんてない。アタシも連れて行って』
目の前で人を殺したオレと一緒に来ると言う。
気に入った。
『好きにするといい』
子供にそう答え、アジトに連れて行った。
驚いたことに子供は女だった。
名前は美夜。
身体はガリガリで短い髪だから、最初は男だと思っていた。
美夜をアジトのある飲み屋に連れて行った。
ここなら仲間もいる。
なんとか生きていけるだろう。
オレはアジトから仕事に行き、終わるとまたアジトに帰る。
美夜が楽しそうに働くのを見ては、心が温かくなった。
飲み屋の仕事に慣れた頃、美夜が我が儘を言い出した。
『アタシも仁と同じになりたい』
オレと一緒にいたいらしい。
美夜の綺麗な手を穢してしまう……。
最初は断ったが、覚悟を決めた。
求められたことが嬉しかったのだ。
俺と一緒にいるという事は、いつ死んでもおかしくないという事だ。
常に誰かに狙われる。
それだけ人を殺してきたのだから。
オレは美夜に最強の暗殺者になることを求めた。
強くあれば、ずっと一緒に居れる。
今思えば、その時から美夜を愛していたのだろう。
仕事のない時間は常に一緒にいて、俺の持てる全ての技術·知識を教え込んだ。
数年で背中を預けれる程の暗殺者に育った。
そして美しい女になっていった。
皆が美夜を求めた。
オレも美夜が欲しい。だけど絶対に求めない。
そしてオレだけが美夜のことを名前で呼ばない。
美夜が俺を慕っているのは知っていたが、他のヤツと同じになりたくなかった。
ボスはそんなオレを憐れみの目で見る。
『歪んでるわね』
会う度に言われた。
自分のために、美夜を暗殺者に育て上げた。
歪んでいても美夜を愛する気持ちである事にかわりない。
側に置いておく為には仕方がなかった。
そして美夜が組織のNo.1になった夜。
――彼女はオレのものになった。

