ほんと、この人のこういうところには敵わない。 味わったことのない、フワリとした感じがする。 そんなことを考えながら遠くを見ていると、いきなり肩をつかまれた。 「見垣さん。」 「…梅さん…」 そこには伊東さんの妻であったお梅さんがいた。 だけど、数年前とは全然違っていてひどくやつれていた。 あの美しい姿の面影はない。 「あなた、鴨太郎さんを殺したそうね。」 ドッと汗が身体全部の穴から溢れ出す。