桜side
『死ぬな』と土方さんのその一言だけが頭のなかに一つ残る。
死という言葉が心の中の何かをぐるぐるとかき混ぜる。
「土方さんも、死なないで……」
ただ、何故か目から涙が溢れた。
「何泣いてんだよ。これが最後のお別れじゃないだろ?」
最後の別れ、かもしれないじゃないか。
これで土方さんがいなくなってしまうかもしれないじゃないか。
そう思ったけど、口にはださなかった。
口には出さなかった代わりに目からどんどんと溢れ出す。
「もういいから、早く行けよ…。な?」
ゆっくりとうなづく。
その拍子に土方さんを見つめると、何故か彼の目からも一粒の雫が落ちていた。
彼の涙のわけなんて知らない。
だけど、私と同じであったならいいと思った。
「総司を頼んだぞ」

