少し先から人の声が聞こえた。
「土方さん…新政府軍が…動けますか?」
「…ああ。」
土方さんは私を抱きしめる手をほどいた。
「もう少し奥に行きましょう」
私はそう言って土方さんはの肩を組みながら歩き始めた。
「居たぞ!こっちだ!」
振り返るとそこには私たちを見つけて続々と集まってくる新政府軍がいた。
お願い、私たちを追ってこないで。
土方さんは傷を負ってて早く走れないし、追いつかれるのも時間の問題だ。
そう考えていた時、突然私の視界が開けた。
鼻の奥がツンとする磯の匂い。
下は海。
「嘘…でしょ…」
とうとう追い詰められてしまった。
絶え間無く兵士が雑木林の中から出てくる。
一人や二人ならまだしも、私一人で相手出来るような数じゃない。

