さて、"素振り"も終わった所で本番いくか。

足元に転がる樫原だったモノを踏みつけ、俺はマンションに入った。


管理人は俺を見てギョッとする。

樫原の返り血と、血塗れの鉄バットを見ればそれはもう不審者確定。


「開けろ、無理矢理抉じ開けられられてぇのか」


管理人は激しく首を振った。

怯えた顔でエントランスの鍵を開ける。


「おい、406号室の鍵も寄越せ」

「そ、それは…」

「殺されてぇのか」

「わ、わかりました!わかりましたから、殺さないで下さい!!」


鍵を受け取り、階段から奴の元へ向かう。

引きずっている鉄バットの音が響くが、誰とも鉢合わせせずに四階に辿り着けた。


406号室…インターホンを押すと、男の声が聞こえた。


「はい」

「Da adesso punire il」(今からお前を処刑する)

「…!Il diavolo d'Italia …!?」(イタリアの悪魔だと…!?)


すぐにそのインターホンは切られ、奴がこちらに走ってくる足音が聴こえた。

ドアに手を触れさせる前に、鍵を開けて蹴破るようにして入った。

すぐ目の前には、奴が上半身裸で立っている。


「Non Kill Me Please…!!」(殺さないでくれ…!!)

「Perché?」(何故だ?)

「Vuoi essere un essere umano!」(人間になりたいんだ!)

「………………」



この強欲悪魔が…血の臭いが既にお前に染み付いているんだよ。



「È povero diavolo…」(哀れな悪魔だ…)

「A…Aiuto…!」(た…助け…!)




高らかに、俺はバットを振るった。