今、私の目の前には血だまりに寝そべる複数のひとと、そのひとだかりに立ち尽くす男を、薄れ行く視界でただ、ぼんやりと眺めていた。


「アヤ…」

男は、小さく呟いた。

あぁ、私の名前は確かそんなんだったな…

それから私の目の前は真っ暗な闇につつまれた。






闇は言った。

二度とお前から離れないと。

もし、この世に、幸せだと笑うヤツがいるならば、私は言ってやろう。

それは、不幸の始まりなだけだと…






2月14日は、何の日ですか?


そう女性たちがこぞって好きな男子にチョコレートを渡す、一大イベントなのです!

そして、私はその一大イベントを必死で逃げていた。


「間宮さん!」

口々に私の名前を呼ぶ野獣たち。

彼らの手には数々のチョコレートが入った包み紙があった。

「受け取ってください!」

頬を紅潮させながら渡す彼らを私は低い視点から見上げるようにして口にする。

「あなたは、誰?」

基本は、その一言で野獣たちの心は打ち砕かれる。

何と可哀想なものたちよ…