涙が、頬を伝った。 「前からずっと思ってたんだ…。この玄関、段差が高いって。玄関からアンタを見るとまるで私は……舞台を見ている観客みたいッ」 そう言い残すと理衣奈と呼ばれた彼女は、今度こそバッグを手に持ち、勢い良く引き戸を開けて出て行った。 トランクを閉める音。 数秒するとエンジンの音が響き、そしてその音も次第に遠のいていき、後にはこの世に誰も存在していないかの様な沈黙だけが残された。