だが、目の前の咲花はくるっと振り返り、多喜也に笑顔を見せた。

なんでもない、苦しくない、という演技。


演技。


それが多喜也にはよくわかる。

「だから、座って落ち着ける所で書きたいなって。けどさっきから見回してもお店無さそうだし。もう日が暮れてきてるし。ビジネスホテルに直行かな…」

咲花はやはりなんでもないという風に振舞ってアハハと笑みを作った。