突然の返答にきょとんと……大きな鞄を肩に掛け、手には原稿用紙の入ったファイルを抱えている目の前の女性を見つめた。 「私の小説、この話でよかったら使って下さい」 女性は手に持ったファイルをぽん、と叩いた。 「ほ、ホントにいいのッ!?」 幻聴を聞いた様な気がして、多喜也は一度聞き直す。 「ええ。いいですよ。私も自分の作った話が劇になる所、見てみたいですから」 軽く笑顔を見せる。