「いや、それがですね……、落し物を届けてくれた人は後日落とし主が現れた時に連絡を取れるようにするかどうか選択する事ができるんですが、その人……

『いやぁ、名乗るほどのもんじゃありませんよ。ネット同様、匿名の名無しさんでヨロシク』

……って言ってましたよ。拾得物届けにはちゃんと氏名書いてるんですけどね。請求権も放棄されているので、全額戻ってくる事になりますね」

「いい人に拾ってもらえて、良かったな」

多喜也が後ろから声をかけると、華奈は再び振り返って笑顔を見せた。




「三和(さんわ)……」