「…つまり、逃げちゃった台本係の人の代わりに、私の小説を劇団の公演で使いたい……という事ですか?」 陽光の差す午後、左手にはショーウインドウが並ぶ赤レンガで舗装されたこじゃれた道を、真島多喜也と名乗った男と女性は歩いていた。 「え?……台本が逃げたってよくわかったね。その事まだ言ってなかったのに」 「さっき、隣で電話のやりとり聞こえてましたから」 なるほど、と多喜也は納得し、軽く笑って歩を進める。 「いいですよ」 多喜也の足が止まった。