「何やってんだよ。柚杏。」 低いテナーの声が聞こえた。 「…!………。」 恭の瞳は黒くて綺麗でした。 「私が移ってる…。」 「は…?」 歌帆の告白どうした? 嬉しかった? 今、付き合ってるの? ねぇ…。 「歌帆のその…。」 私は言いたいことが多すぎて口ごもった。 「ああ…。さあな。明日にでもあいつに聞けよ。」 「恭…。」 私も好き…。 私が言いたくても言えない言葉。 「じゃあな。」 ひらひらと手をふる恭。 その背中につぶやいた。 大好きです…。 歌帆はもういなかった。