あのサーカスはもう姿形はなくなっていた。

裕子と僕の関係はとりあえずは以前と何の変わりもなかった。

しかし彼女は美智子のことにはふれることはなかった。

それは彼女を選択しなかった僕へのちょっとしたしっぺ返しかと思うときがある。

でもあの時の僕はどちらかを選ぶことなんて出来なかった。

なぜなら美智子は僕にとって大切な過去であるし、裕子は僕にとって大切な現在だった。

どちらかだけ選択することは、今の自分を半分否定してしまうことになるからだ。