これから僕は、初めて彼女にうそをつくことになる。

「明日、どこに行く?」

 裕子はアイスティーの氷をストローでかき混ぜながら、僕に訪ねた。

「あっ、ごめん。明日おれ、都合悪いんだ。言ってなかったけか?」

「…そうだっけ。」

「うん、明日職場の人との約束があるんだ。」

「そうなんだ。じゃあ仕方ないなあ」

僕は自分自身で彼女には誠実なつきあいをしてきた。

しかしそれもさっきまでだった。

明日人と会う約束をしているのは事実だが、それは仕事場の人間ではない。

でもウソをついたのにはそれなりの事情がある。