真夜中のキス[短編]



「あ、たし…っ帰る…!!」




急いで、窓に手をかけた瞬間――――

あたしの腕は後ろに引き寄せられて、体は勢いよくベッドに倒れ込んだ。



目を開けると、翼の顔が目の前にあって。
あたしは、翼と向かい合う形になっていた。




「……なに…?」




あたしは顔を横に向けて、翼の目を見らずに言った。




「ねえ、何でほんとの事言わないの?」




翼は、そう言ってあたしの手首を押さえつけた。




「―――翼、手、痛いよ…」


「美紗が、ほんとの事言ったら離す」




……やめてよ。

これ以上近づいたら―――




「美紗」




近づいたら―――――…




「会いたかったの…

翼に…会いたかったよ……」




あたしの目からは、また涙が溢れて来た。