……え?
あたしはそっと、自分の頬に触れた。
―――冷たい。
あたしは手のひらで、頬を伝う涙を拭った。
…ねえ、どうして気づくの?
どうして翼には…分かってしまうの?
分かって欲しく、なかった。
気付いて欲しく、なかった。
「…っ泣いて…なんかないよ?」
「声、震えてるし」
あたしの身体が、ビクリとした。
ダメだ。
気付かれちゃ…ダメだ。
今、気付かれたら…あたしは―――…
「何でもない…からっ…」
「何かあったから、俺の部屋に来たんでしょ?」
翼がそう言って、床がきしむ音がする。
――ダメだ。
もうこれ以上この部屋にいたら…きっと、バレてしまう。
あたしの、本当の気持ちが。
せっかく諦めた、あたしの気持ちが。

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