驚いたあたしは、パッと翼の方を振り向いた。
翼は眠たそうに目を擦りながら、ベッドの上に座っている。
もしかして翼、起きてたの…?
一瞬、あたしの胸がドキンとする。
翼、キスしたの…気付いてた…?
「今、何となく目ぇ覚めて…
毛布掛かってるの気付いたから…起きてみたら美紗がいたから……」
……何だ。
気付いて、なかった。
でも出来れば―――最後は、話したく、なかった。
何も言わず、サヨナラしたかった。
「……うん。
でも、別に何でもないよ?
疲れてるのに…ごめんね」
あたしは翼に背を向けたまま言った。
振り向けなかった。
翼の顔を、見るのが怖かった。
気付かれたくは、なかったから。
「―――じゃあ…何で、泣いてんの?」

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