真夜中のキス[短編]



でも、例え寝言でも…
『美紗』って呼んでくれたのは…何日ぶりなんだろう…?


あたしの目からは、涙が出ていた。
涙がポタポタと床に落ちた。


せっかく諦めたのに…
せっかく忘れようとしてるのに……





何で忘れさせてくれないの?


これ以上、翼のこと好きにさせないで。
これ以上、あたしの気持ちを惑わさないで。



“美紗”



翼があたしの名前を呼ぶ声が、いつまでも胸に残る。




「翼…っ好きだよ…
大好きだよ…?

だからごめんね…


―――…もう会わないから」




あたしはゆっくりと翼に近づくと、そっと唇にキスをした。


そしてそのまま、
あたしは翼に背を向けた。

窓に手をかけた時、突然後ろから声が聞こえた。




「あれ…美紗…何してんの…?」


「え…?」