真夜中のキス[短編]


***


コンコン…




「つ…翼…?」




夜。
翼が仕事から帰って来たことを確認すると、翼の部屋の窓を叩いた。


あたしの家と翼の家は隣どうし。

だからあたしの部屋と翼の部屋の窓は、お互いが行き来できるくらい近い。




「……翼?」




もう一度呼んでみても、返事はない。

…まだ部屋に戻ってないのかな…?



あたしはそう思って、そっと窓を開けた。

翼はいつも、
「あたしが入って来れるように」と言って窓の鍵は開けていてくれた。




「……何だ、寝てるし…」




帰って来てすぐに寝てしまったのか、翼はベッドに倒れ込むような格好で寝ていた。




「もう…風邪引いちゃうよ…」




あたしは部屋に入り、
翼の寝ているベッドに近づくと、そっと上から毛布を掛けた。




「―――んん…美紗…?」


「…え?」




はっとして翼を見てみると、翼はまだ寝ている。




「寝言、ね…」




あたしは無意識に、ため息をついていた。