あの時は、あんなに幸せだったのに。
翼があたしのことを、
“特別”だと思ってくれるだけで、それだけで良かったはずだった。
あの時までは、あんなに近くにいたはずなのに…
今では電話で時々話すことが出来るくらいで…もう、ほとんど会う事すら出来ない。
いつもいつもすれ違って、
あたしは翼の背中を見ているだけ。
“彼氏”なのに―――こんなにも、遠い。
「……っ…!」
思わず胸がギュッとなって、
あたしは急いで服の裾で涙を拭った。
「…っふ…うえ…」
ねえ、あたしだって寂しいんだよ。
分かってたけど…辛いんだよ。
けど…
翼のこと、大好きだから。
翼のことが、大切だから。
だからね…?
……あたし、決めたよ。
翼の夢を、ちゃんと応援する。
だから翼…
今日でちゃんと、さよならするから。

![[新連載]君への想い、僕らの距離。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.777/img/book/genre1.png)