あたしは、ゆっくりと顔を上げて翼の顔を見た。
翼は軽く微笑むと、もう一度あたしの頬に触れた。
そしてそっと、あたしの唇に自分の唇を重ねた。
少し冷たい、唇の感触。
唇が離れたその時…12時のアラームが鳴った。
あたしは…翼の腕の中を抜けた。
「……美紗…?」
「―――ばいばい、翼」
翼は一瞬、悲しそうな顔をしたけれど…
「……ごめんな…、ありがとう」
そう言ってあたしを見つめた。
あたしはぎゅっと目を瞑り、翼の部屋を出て行った。
ねえ、翼…?
あなたとの最後のキスは、まるでシンデレラの魔法が解けてしまうような、
そんな儚い夢のようなキスでした。
だけどあたしは、
それだけで、十分だったから――――…
これからもきっと、これからもずっと、あなたはあたしの愛しい人。
だから、あたしは願うよ。
どうか、幸せになって。
大好きな人。
[完]

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