やっぱり、好きだ。

 
 「・・・忘れないでよ。記憶改ざんとか、冗談言いたかっただけだし。覚えててくれて嬉しかった。俺との思い出は嫌な事ばっかりだと思ってたから」

 なぜか苦しそうな顔を見せる青山くん。

 「逆でしょう?? 私がつきまとってたから・・・」

 「俺は嫌な思いなんか1回もしてない」

  青山くんがパソコンを打つのをやめ、私の方に身体を向けた。

 「思い切りのいい嘘つかないで下さいよ」

 青山くんの優しさに苦笑いするしかなかった。だって、それが嘘だという事を、嫌と言う程知っている。

 「嘘じゃない。あの頃、サヤ子といた時間はいつも楽しかった」

 青山くんが私の手を握った。

 思い切りのいい優しい嘘が、痛い。青山くんの本心を分かっているから苦しい。青山くんの言動は、同僚として私が働き辛くない様に配慮しての事だろう。変に気を遣わせている事が申し訳ない。

  「今でも、後悔してるんです。こんなに優しい青山くんに、なんでつきまとったりしたんだろうって。私、平気でやってたんですよ・・・。平気で人の嫌がる事をしていたんですよ・・・」

 そっと青山くんの手をどけて教科書のページをめくった。

 のどの奥がすごく熱くて、油断すると涙が出そうだった。