『ふう』深呼吸をして、保健室に向かう。
大きく肺を動かして空気の入れ替えをしたというのに、心が落ち着かない。
怖い。青山くんをまた好きになってしまいそうで怖い。
好きになったら、またろくでもない事をしでかしそうで怖い。
音楽室を通りかかると、桜井先生が合唱部の指導をしていた。
そっか。桜井先生、顧問なんだ。
青山先生と桜井先生って、美男美女でお似合いだ。
私は何を好きだの怖いだの考えていたんだろう。2人の間の隙間に入り込もうなんて気は毛頭なかったけれど、私なんてその隙間に入れる身分でもないのに。
恥ずかしすぎるやつって、私の事を言うんだろうな。
反省しつつ保健室へ歩いた。
鍵を開けて保健室の中に入ると、体操服に着替えた吉村さんがベッドで寝ていた。
吉村さんを起こさぬ様に、そーっとデスクに移動して一息ついてから『5時までに戻ってきます。制服、用意出来るかもしれません』と手紙を書いて吉村さんの枕元に置き、物音をたてない様に保健室を出て、また鍵をかけた。



